ブラック企業勤め経験累計20年、合計6社のブラック企業に勤めた経験がある「ブラック企業の達人」が、ブラック企業にありがちな”あるあるネタ”をお送りします。
今回は従業員の生命線、給料の支払いに関してです。
今回紹介するブラック企業は、中古PCや電子機器の販売を行っていて、ネットのECサイトと秋葉原に小さいながら店舗を持っています。従業員は店舗スタッフも合わせて15名程度の小企業。対外的には一応”電子機器メーカー”と言っていますが大嘘です。単に海外から安い商材を二束三文で仕入れては、ラベルやパッケージを日本語に貼り替えて再販売する、いわゆるバッタ屋です。
この会社の給料の支払い方がひど過ぎて泣けてきますので、その実例を紹介します。
目次
いつのまにか給料日が25日→月末→翌月10日→翌月15日と変わっている
いつのまにか給料の支払日が後ろにズレたりします。
はじめは25日、次は月末、あげくには翌月の10日、15日と、どんどん後ろにスライドして行きました。
その告知方法が適当で、週一の定例会議の最後の方で社長がさらっと言うんです。
「あ、今月から給料日が変わるから」と。
それだけ。それだけです。理由や説明は一切なし。
文句を言う従業員は誰もいません。そんな覇気のある従業員はとっくに辞めていますから。
これがブラック企業の給料日の実態です。
毎月の遅配は当たり前
ズレにズレて翌月15日になった給料日当日。
当然のごとく給料はまだ支払われません。
朝礼で一言「今月ちょっと(給料)遅れるから」で済まされます。
ここでも一切の弁明や謝罪はありません。
で、従業員もだんまり。
ね?ブラック企業の給料日っておかしいでしょ?
うるさく何度も催促した人にだけ支払われる
では、給料は一体いつもらえるのか?
大体給料日を10日近く過ぎると、催促をする従業員もちらほら現れます。
催促と言っても、基本的には文句を言えない大人しい性格の人ばかりですから、平身低頭「遅れている給料をなんとかいただけないでしょうか?」と言うぐらいです。
そうすると、社長は不機嫌そうに「○○さんがうるさく何度も催促するから半分だけ支払ってあげて!」と経理に命令して、その数日後にやっと半額が支払われるのです。
ということは、催促しない人はいつまでも給料がもらえない
催促しない人は?
いつまでたっても1円ももらえません。
社長曰く「うるさく催促した人」にだけ、給料は支払われるのです。
社長が不機嫌になるの承知でこらえ、何度も何度も頭を下げ、「払っていただけないでしょうか?」と催促できた人にだけ給料が支払われるのです。
催促も早い者勝ち
半額の給料を、何度も催促して、やっと払われるわけですが、その原資には限りがあります。
しかも、給料として支払う金額の限度は、物理的に会社の金庫にあるお金の限度で決定されるのではなく、社長の適当なさじ加減で決められます。
つまり、会社にお金があるなしにかかわらず、社長が「今月はもう払わない!」と決めたら、そこで支払いはストップされるのです。
ある営業マンは気が弱く催促ができず、最長で8ヶ月の間、交通費だけしかもらえていませんでした。
正社員をアルバイト価格で雇い足りない分は奥さん任せ
辛抱強く催促し、運よく給料が支払われても半額程度しかもらえません。
そんなんで生活していけるの?と思いますよね。
できるんです。
そういう従業員には決まってしっかりものの奥さんがいます。
パートやアルバイトではなく、しっかり一人前働いている奥さんが。
彼女達も夫がこんなだから、毎日フルタイムでしっかり働かざるを得ません。
そうすると、夫がバイト並みの給料10万未満でも、奥さんがフルタイムで15万~20万稼げれば、世帯収入としては月額30万程度。子供がいてもギリギリやっていける程度の稼ぎにはなります。
計算しつくされたギリギリ生きて行ける程度の給料しか払わない
この社長は経営はからっきしですが、「従業員が生きるか死ぬかのギリギリの勘どころ」だけは外しません。
従業員が金欠で本当に死にそうになると、死ぬ一歩手前ぐらいのギリギリのところで、ふっと一時払い金をくれるんです。
お情け程度の数万円ですが。
それで急場をしのげれば、後は奥さんの稼ぎがあるし、不満はあれどなんとか生きては行けるものです。
ここで言っている「死ぬ」とはもちろん比喩で、会社を辞める、労基署に駆け込む、などを表します。
従業員を追い込み過ぎて、業務の途中で辞められたり、法的に手段に出たり、最悪労基署に告げ口でもされたら、やっかいです。
いつもやっかいになる前の、ギリギリのところで金を出すんです。
そこが社長の勘がするどいところ!
ある従業員などは、給料未納が14ヶ月近くになり「もう我慢できない」と労基署に訴え出ようとした前日に、タッチの差で一時払い金を受け取り、怒りの矛をおさめた、という事もあります。
数万円で矛をおさめるな、っていう話ですけどね。
いつ、いくらもらったかわからなくなる
給料の遅配や半金払い、臨時の一時払いなどが、各人ほぼ毎月あるわけで、自分がどれだけ給料をもらったか、だんだんわからなくなってくるんです。
そうなると、みんな給料の受け取り状況を経理担当者に定期的に聞くのですが、社長から口止めされていてなかなか答えてくれません。
そうこうするうちに、経理担当者だけは入れ替わりのサイクルが早く、いつのまにかいなくなって新しい人が来るので、まただんだんと情報が出にくくなります。
そうして、いったい自分は給料をいつ・いくらまでもらったか、誰もわからなくなるのです。
帳簿上は満額払ったことになっている
それでも、毎月必ずもらえる給料明細は満額払ったことになっているのが不思議でした。
これ、違法ですよね?
給料をもらえた人はなんだか申し訳ない気分になる
そんな適当な給料でも、もらえる人ともらえない人に分かれるため、もらえた人は運がよく、もらえなかった人は運がなくかわいそうな人、という妙な図式が社内で出来上がります。
もらえた人は思います。あなたと私の違いは、催促したかしないか、運が良いか悪いか、の違いしかない。なのにあなただけ給料をもらえないなんて・・・
そして、給料をもらえた人は、もらえなかった人に対して、「なんだか申し訳ない」という気持ちが生まれてきます。
本来嬉しい日であるはずの給料日が、もらえない人にとってはもちろん憂鬱です。
加えて、もらえた人もなんだか憂鬱な気分になる、最悪な日になるわけです。
ひと月で一番憂鬱な日が給料日って、超ウケますよね。
それでもなんでその会社を辞めないの?
こんな話を家族や友人に話すと口をそろえて「なんで辞めないの?」と聞いてきます。
辞められないんです。
たまった未払いの給料の額が大きすぎるから。
辞めて、労基署に駆け込んでも、訴えても、どんなことをしても、社長は絶対に金を払わない、ってわかっているから。
数万ぽっちでも毎月借金を返済してもらえる方がまだまし。借金はさらに増えているけれど。そんな状況です。
今さら他で働く自信が無い
それと、こんな変な会社で変な働き方のクセがついてしまうと、なかなか普通の俗世間に戻れなくなります。
ボーナスが出る会社なんて行ったことないし、行けもしないけど、行ったら行ったで大変そう。
いつのまにか弱気な負け癖、逃げ癖までついています。
逆境で芽生える妙な連帯感
さらに、やめられない理由があります。
逆境になると社員同士の結束が強まるんです。
同じ給料をもらえない同士、不幸なもの同士で、傷をなめ合い、励まし合い、連帯感が生まれるのです。
不思議なことに給料日以外は皆で楽しく仕事しちゃ得るんですよね。
忘年会などは、会社からお金は出ないので、皆で乾物や缶ビールを持ち寄り、朝まで飲み明かすぐらい毎年盛況でした。
不思議だよねブラック企業って。
まとめ
ブラック企業の給料支払い形態は本当に謎だらけです。
それでも辞められなくなるのだから、ブラック企業は入ったら最後だと思ってください。
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